スミヤントさん、ワヤンの魅力を教えてください。

ワヤンインタビュー1

2012年3月2日に行われるワヤン公演に向け、
ダラン(人形遣い)のスミヤントさんに
ランバンサリメンバーが根掘り葉掘り、とりとめなく聞いてみました。


日本で公演を行うのは何回目ですか?
6年前に日本に移り住んで、今回で6回目ですね。

今回の演目(ラコン)を選んだきっかけは?
ワヤンで代表的な人物、
クンボカルノやスマントゥリなどがいますが、
ある日みたエッセイで、ビスモという人物を知り、
心が強く、まっすぐな男という性格に興味をもち、
いつかワヤンで取り上げたいと考えていて、演目を選びました。
(ビスモは今回の演目の主人公デウォブロトの後の名前)

主な登場人物は?
デウォブロト(主人公)
スンタヌ(主人公の父・王様)
ドゥルガンディニ(主人公の継母)
アンボ王女
黒山大佐
の5人です。

なぜ「黒山」と名付けたんですか?
怖いイメージでつけました。
インドネシアだと「海の雲」とか
「雷○○」「虎○○」のように名付けたりもします。
あと、日本の方に名前を覚えやすいようにしました。
(王女たちの名前も印象的なので、本番をお楽しみに!)

普段はどんな練習をしてますか?
小さいクリル(幕)をはって、
息子がいないスキに練習してます。
いっしょにボクもやる!ということになるので。(笑)
奥さんに、日本語の発音やイントネーションを見てもらっています。

今、準備で苦労しているところは?
日本語の発音です。
ジャワのリズムで日本語を話すと伝わらないので。
例えば、伸ばす音や詰める発音は難しいです。
あと、笑いも重要なので、冗談が通じるか心配です。

ダランを務めるにあたり、他の人とは違うポイントはありますか?
まず日本語で語るということ。
ストーリーの説明をすること、です。
現地のワヤンでは、問題が起きて、瞑想し、啓示がおりて解決する、
という流れがあるんですが、どんな啓示なのかは説明がなかったりします。
また、ストーリーを理解してもらうためにも、
日本語でうまく伝えていきたいと思っています。

とてもジャワの香りがする日本語なのですが、
声の出し方など工夫してますか?
日本語に自信があるわけではないですが、
キャラクターのイメージで声を出しています。
例えば、ラクササだと武田信玄だったり、アルジュノだと徳川家康とか。(笑)

村上春樹の小説をよく読んでいるそうですが、
彼の小説に出てくる人物って、ワヤンに出る人物に例えられますか?
ノルウェイの森のワタナベトオルは、デウォブロトと重なりますね。
直子は暗いので、スムボドロと似ているかな。
小林緑はスリカンディとか。
村上春樹の小説を読みながら、ワヤンの登場人物を考えたりしてます。
今回の演目も村上春樹の小説の影響があるとも言えますね。

えぇ~!そうなんですか!?
日本の題材でワヤンにしたいものはありますか?
ワンピースですね!
ルフィは独特で、戦う性格もワヤンにしたらいいな、と思っています。


などなど、話は盛り上がる一方のインタビューでした。
スミヤントさんの選んだ今回の演目(ラコン)、
どうぞ本番でご堪能ください。
グヌンガン

あらすじ

アスティノ国の王、スンタヌは、
ある日美しい女性を目にし、
たちまち恋に落ちてしまいます。
この女性ドゥルガンディニは、
自分の子供を王にすることを、結婚の条件としました。
スンタヌ王は二つ返事でこの条件を受け入れ、
ドゥルガンディニを王妃に迎え入れます。
それはスンタヌ王の前妻の子、
主人公デウォブロトの継母となったことを意味します。

結婚から二十年の月日が経ち、
王位を譲る日がやってきました。
スンタヌ王は、結婚の条件通り、
継母ドゥルガンディニの息子(デウォブロトの弟)を
王座へと譲ります。

さらに、継母ドゥルガンディニは
自分の息子のために、
王女の結婚をかけた武術大会で勝ち取ってくる事を
デウォブロトに命じます。

その頃、怪物たちの国ラクササでは、
酒と女性が大好きな黒山大佐も
武術大会の話を聞きつけます。
どうやら王女アンボにメロメロのようです。

王女をかけた武術大会がはじまり、
黒山大佐との激しい戦いの末、
主人公デウォブロトは結婚の権利を手に入れます。
継母ドゥルガンディニとの約束どおり、
王女を連れ、疲れた体でアスティノ国へと戻ります。

戦いに勝利した勇ましいデウォブロトに
アンボ王女は恋を抱いてしまいます。
恋い焦がれる王女、
約束を果たさねばならない主人公、
物語はそこで最大の悲劇を迎えてしまうのです。。。

ダランプロフィール

スミヤント(Sumiyanto)
インドネシア、中部ジャワ・クラテン出身。
ソロ国立芸術高校伝統音楽学科卒業後、バリ島にて演奏活動を始める。インドネシア国立芸術大学在学中より国内外の学生にガムランを教授するほか、“Keras tanpa S”というグループを立ち上げ、公演活動を行う。
その後、チェコの在プラハ インドネシア大使館の要請を受け、プラハにて活動。2006年からは活動拠点を日本に移し、アメリカや東欧、日本の現代作曲家とのコラボレーションにも取り組んでいる。

ホームページ:スミリール~ジャワの音楽と踊り Sumilir
http://sumilir.cocolog-nifty.com/blog/

20120312公演情報

ジャワの影絵「ワヤン・クリ」公演
東京池上本門寺 朗峰会館 フライデーガーデンコンサート
演目:「Dewabrata~デウォブロト王子の誓い~」

ユネスコ世界無形遺産に認定されたインドネシアの影絵芝居「ワヤン・クリ」
光と影、語りとガムラン音楽の調べ・・・
様々な要素が混然一体となって織りなす幻想的な世界をお楽しみください

日時:2012年3月2日(金)
開場(前奏曲演奏)19:00 開演19:30
入場料:3,000円・・・全席自由、1ドリンクつき
6,000円・・・要予約、食事+1ドリンクつき
(開演までに会場横のレストランHanamuraにて食事をお済ませください)
会場:池上本門寺 朗峰会館
東京都大田区池上1-2-1
Tel : 03-3752-3101

演奏:ダラン(人形遣い) スミヤント
ガムラン演奏 ランバンサリ

ご予約・お問い合わせ:東京池上本門寺 朗峰会館
Tel : 03-3752-3101

協力:NPO法人日本ガムラン音楽振興会