2013年6月9日に行われるワヤン公演に向けて、
ダラン(人形遣い)のスミヤントさんに、
またまたインタビューいたしました!
今回の主人公スマンはどんなキャラクターなんでしょう?
ズルい、というキャラクターです。
一般的には悪役で、親や先生は、
スマンのようにならないように!と言ったりします。
いわゆる悪いお手本なんです。
ガトコチョとかビモのようになりなさい、と。
でも、どういう所が悪いのか知らない人が多い。
スマンは悪者扱いされていますが、
自分の欲しいものを手に入れるために努力したり、
小さなチャンスを生かしたりするという点では、
努力家とも言えるんじゃないかな? と思っています。
人を殺したりとか悪いことはするんだけど、
スマンなりに理由があるわけで、
彼自身は悪いことをしているとは思っていないんですよね。
そうですね。
お姉さんは結婚しても王座にはつけない。
不思議な子供が100人も生まれたのに、
頼れる人があまりいない。
一族の血がなくならないように頑張っているわけです。
自分が頑張らないとクロウォ一族が無くなってしまうので、
一所懸命になっているわけですよね。
そうですね。
今回のワヤンはそんな流れをうまく表現できたらと思っています。
最後に、インドネシア人が日本語を使って公演をするのは
非常に珍しいと思いますが、
どんな気持ちで挑むのか教えて下さい。
子供の頃に楽しんできたワヤンの雰囲気や楽しさを伝えたい
という気持ちでやっています。
伝えるって、言葉が大事ですよね。
いくらダランが上手でも、ジャワ語だと通じない。
ただ、ジャワ語をそのまま翻訳すると、
変な日本語になっちゃうんですよね。
たとえば、「いただきます」という言葉がジャワ語にないように、
ジャワ語には日本語にはない表現がたくさんあります。
そういった言葉をどう翻訳するか、考えさせられますね…。
と、興味深い話がつきなかったのですが、
インタビューの詳細は公演のパンフレットに掲載していますので、
続きは公演でぜひご覧ください!
あらすじ
アスティノ国の王であり、パンドウォ五王子の父であるパンドゥがシモバシラ山賊団に暗殺された後、パンドゥ王の兄で盲目のクルが王となりました。クル王と妃グンダリの間には、クロウォ百王子があり、グンダリの弟スマンは、クル王の宰相として力を持ちます。しかし、パンドゥ王暗殺を指示したのは、実はスマンでした。
パンドゥ王の死から3週間後、クル王は会議の場で、次の王位を自分の息子クロウォではなくパンドウォに譲ることを宣言します。また、パンドゥ王の葬儀をスマンの手配により行うことを決めたのでした。
スマンはパンドウォを倒そうと、葬儀の機会をとらえた策を用意しました。日頃面倒を見ている甥のクロウォのもとへ行き、99人の弟の将来を案ずるクロウォの長男ドゥルユドノに計画を打ち明けます。
パンドウォ兄弟の中で次男ビモだけは、策謀の気配を感じ取っていました。また、ビモは、やりたい放題のクロウォをこらしめますが、兄ユディスティロに止められます。
スマンは計画を実現するため、大工の棟梁、次郎を邸に呼びます。部下のチンピラを相手に、パンドゥ王との確執をはじめ心の内を語るスマン。やがて大工の棟梁、次郎がやってくると、スマンは次郎を脅して葬儀のために危険な建物を建てるよう命じるのでした。
そして葬儀の日。多くの国民が訪れ、パンドウォと母クンティが悲しみもあらたに応じている間、クロウォは浮かれ気分で酒に酔っています。葬儀が終わり、夜も更けたころ、クンティの部屋に忍び込む者…それはスマンでした。スマンはクンティに長年の愛を語りますが、拒まれます。騒ぎに気づいたビモが駆けつけて間もなく、スマンの計画どおり、合図の鷹の声が響き渡り・・・
ダランプロフィール
スミヤント(Sumiyanto)
インドネシアの中部ジャワ・クラテン出身。ジャワの音楽・舞踊・影絵芝居を中心に活動するグループ「スミリール」主宰。インドネシア国立芸術高校伝統音楽学科卒業後、バリ島にて演奏活動を始める。その後、インドネシア国立芸術大学スラカルタ(STSI。現ISI Surakarta)に入学。在学中より国内外の学生にガムランを教授するほか、“Keras tanpa S”というグループを立ち上げ、作曲・公演活動を行う。アメリカや東欧、日本の現代作曲家とのコラボレーションにも取り組む。大学卒業後、チェコの在プラハ・インドネシア大使館の要請を受け、プラハにて活動。 2006年より活動拠点を日本に移す。これまでに自主公演やフェスティバルなどでの演奏のほか、「ランバンサリ」や「ハナ☆ジョス」の公演に出演。ガムラン演奏家として、またジャワの影絵芝居ワヤンのダラン(人形遣い)として活躍している。近年は全編日本語によるワヤンの上演に取り組む。ジャワ人が海外で全編にわたってその国の言葉だけでワヤンを上演するのは世界的にも珍しく、ワヤンの魅力を親しみやすい形で伝える存在として将来を嘱望されている。
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